最終回・ようこそ、小さな住人さん

最終回・ようこそ、小さな住人さん

あちこち調べてみると、庭のヤマモモに巣を作ったのは「ヒヨドリ」のようだ。
特徴がよく似ているし。
昨夜、庭で鳥の鳴き声とバサバサという音が聞こえた。
ダイニングの窓を開けて、外を見るとノラネコがいた。
ノラネコは、わたしの姿に気がつくと逃げていった。
暗い中、目を凝らすとテラスの上に黒い塊。
ムクムクとした両の掌にすっぽり収まるくらいの大きさ。
先ほどの鳴き声からしてヒナだとわかった。
巣の中へ戻そうとしたが、触れた瞬間にバサバサとどこかへ飛んでしまった。
懐中電灯を持ってきて探したけれど、見つけられなかった。
ノラネコがいなくなったから、大丈夫だろうと思い、その夜は眠った。
朝早く目が覚めた。
「ピー、ピー」という高い音の鳴き声が聞こえた。
ここ数日聞こえていた鳥の鳴き声だった。
玄関から庭に出て、愕然とした。
例のノラネコが生垣の根元にいて、その近くに鳥の羽と小さな骨。
あの後、また襲ったのだ。
親鳥は電柱や近所の木に止まって、しきりに鳴いていた。
悔しいし、残念だし、ますますネコが嫌いになった。
自然の摂理とはいえ、ここは住宅街。
野生動物にやられるのなら、仕方ないとあきらめきれるけれど、人間のペットであった動物にやられるのは、とても腹が立つ。
ヒナの遺骸は庭の3ヶ所にあった。
ヒナは2~3羽いたらしい。
ダンナが遺骸を庭の片隅に埋めた。
ヤマモモにできた巣はそのままにしておこうと思う。
また来てくれるといいな。